寄付金税制
2012/02/21 火曜日確定申告、真っ盛りである。で、確定申告と言えばもちろん寄付金控除である(?)。
特に昨年は東日本大震災が発生し、被災地等には多くの寄付が行われた。震災支援として国民の4人に3人が何らかの寄付を行い、その寄付金総額は4,400億円にも上るという民間の調査結果もある。
それに加え、今回は寄付金に関連する税制においてもダイナミックな改正もあった。ということで、今回の確定申告の主役である寄付金税制(個人関係のみ)について、まとめてみた。
●概要
概要については、国税庁のパンフレットによくまとまっている。ポイントは下記のとおりである。
- 寄付金控除(所得控除)と寄付金特別控除(税額控除)
- 寄付金控除の対象となる「特定寄付金」
- 4種類の寄付金特別控除
- 寄付金控除及び寄付金特別控除の計算式
- 控除を受けるための手続
- 住民税における寄付金の扱い
●寄付金控除(所得控除)
寄付金のうち寄付金控除の対象となるものを「特定寄付金」という。今回よりそこに「震災関連寄付金」が加わった。
計算式:(支払った寄付金-2,000円)=寄付金控除
(*)支払った寄付金の限度額:
震災関連寄付金以外の特定寄付金については総所得金額等の40%を限度とする。震災関連寄付金については、総所得金額等の80%から他の特定寄付金を控除した額を限度とする。
●寄附金特別控除(税額控除)
従来からの政党等寄付金特別控除に、3つの新たな特別控除の制度が加わった。いずれの寄付金も寄付金控除(所得控除)との選択が可能である。控除率は政党等寄付金特別控除のみ30%となる。
計算式:(支払った寄付金の額-2,000円)×30%=特別控除額
計算式:(支払った寄付金の額-2,000円)×40%=特別控除額
計算式:(支払った寄付金の額-2,000円)×40%=特別控除額
計算式:(支払った寄付金の額-2,000円)×40%=特別控除額
(*1)支払った寄付金の額の限度額:
特定震災指定寄付金を除く寄付金の合計額は、総所得金額等の40%を限度とする。特定震災指定寄付金は総所得金額等の80%から他の寄付金を控除した金額を限度とする。
(*2)特別控除額の限度額:
政党等寄付金特別控除を除く特別控除額の合計額は、所得税額の25%を限度とする。政党等寄付金特別控除は単独で所得税額の25%の限度枠をもつ。
(参考)日本野鳥の会への寄付金
日本野鳥の会への寄付金は従来より寄付金控除の対象となっていたが、昨年3月に日本野鳥の会が「公益財団法人」の認定を受けたことに伴い、認定を受けた4月1日以降の寄付金については「公益社団法人等寄付金特別控除」の適用が可能となった。3月31日以前に支払った寄付金は所得控除のみとなる。
●寄付金税制の適用順序
寄付金税制の適用が複数あり、その寄付金の額が限度額(所得金額の40%または80%)を超える場合、各制度の適用順序は下記のようになる。
寄付金控除 → 公益社団法人等寄付金特別控除 → 認定NPO法人寄付金特別控除
→ 政党等寄付金特別控除 → 特定震災指定寄付金特別控除
●寄付金控除と寄付金特別控除の選択
寄付金控除と寄付金特別控除の選択にあたっては、その年の納税者の課税所得における所得税の限界税率と寄付金特別控除の税額控除率とを比較することによって有利不利の判定ができる。(総合課税を前提)
例えば、課税所得が1,000万円(所得税の限界税率33%)の人の場合、政党等寄付金(税額控除率30%)については所得控除が有利となり、特定震災指定寄付金(税額控除率40%)などについては税額控除が有利となる。
●控除を受けるための手続
寄付金税制の適用を受けるためには、下記の手続きが必要となる。
- 確定申告書への記載
- 寄附した団体などから交付を受けた領収書などの添付
- 控除計算明細書の添付(特別控除の場合)
このほか特定寄付金の種類よっては、政党等寄付金特別控除における「寄付金(税額)控除のための書類」など、さらに書類が必要になる場合がある。
(控除対象となる寄付金)
控除対象となる寄付金は「ふるさと寄付金」ほか3種類に分けられるが、所得税の特定寄付金と対比させるとわかりやすい。
所得税において寄付金税制の適用があっても、住民税においては適用がないことはあり得る。(国に対する寄付金など)
一方、所得税において寄付金税制の適用のないものは基本的に住民税においても適用はないが、唯一、都道府県・市区町村が条例で個別指定した、認定NPO法人でないNPO法人への寄付金については平成23年度の税制改正によって住民税においてのみ寄付金控除の対象となった。
(控除方法及び控除額の計算)
住民税における寄付金控除の控除方法は税額控除のみである。
控除額は「基本控除額」と「特例控除額」の2つ種類があり、「特例控除額」はふるさと寄付金のみに適用される。
(申告)
所得税の確定申告を行う場合には住民税の申告は不要となるが、住民税のみに適用される寄付金(条例指定のNPO法人に対する寄付金)控除の手続きについては、住所地の市区町村に申告を行う必要がある。
前回の医療費控除同様、国税庁サイト等にある寄付金税制に関係するページを下記に抜粋してみる。
【パンフレット・手引き】
- 寄付金を支払ったとき
- 政党等寄付金特別控除(計算明細書)
- 認定NPO法人寄付金特別控除(計算明細書)
- 公益社団法人等寄付金特別控除(計算明細書)
- 特定震災指定寄付金特別控除(計算明細書)
- 特定地域雇用等促進法人に寄附した場合の寄付金控除
- 特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額の寄付金控除
【タックスアンサー】
【質疑応答事例】
【文書回答事例】
- 特定のNPO法人等へ助成することを希望して支出する寄附金にかかる税務上の取扱いについて
- 定額給付金をNPO法人が代理受領して地方公共団体へ寄附した場合の寄附金控除の適用について
- 沖縄県病院事業局に寄附をした場合の税務上の取扱いについて
- NPO活動助成のため山形県が設けた基金に対して寄附を行った場合について
【東日本大震災関連】
- 東日本大震災に係る義援金等に関する税務上(所得税、法人税)の取扱いについて
- 東日本大震災におけるボランティア団体等向け寄附金の指定について
- 東日本大震災の被災者支援活動を行う認定NPO法人に対する寄附金について
- 義援金に関する税務上の取扱いFAQ
- 東日本大震災に係る指定寄付金一覧表
- 所轄国税局長の確認を受けた認定NPO法人一覧
【所得税】
【所得税施行令】
- 215条(法人設立のための寄付金の要件)
- 216条(指定寄付金の指定についての審査事項等)
- 217条(公益の増進に著しく寄与する法人の範囲)
- 217条の2(特定公益信託の要件等)
【所得税施行規則】
- 48条の8(公益の増進に著しく寄与する法人の範囲)
- 48条の9(特定公益信託の信託財産の運用の方法等)
【所得税基本通達】
- 78-1 (支出した場合の意義)
- 78-2 (入学に関してする寄附金の範囲)
- 78-3 (入学に関してする寄附金に該当するもの)
- 78-4 (国等に対する寄附金)
- 78-5 (災害救助法の規定の適用を受ける地域の被災者のための義援金等)
- 78-6 (最終的に国等に帰属しない寄附金)
- 78-7 (公共企業体等に対する寄附金)
- 78-8 (個人の負担すべき寄附金を法人が支出した場合)
【総務省際サイト】
(望月)