簡易課税のみなし仕入率の一部改正

2014/08/06 水曜日

●概要

平成26年度税制改正において、消費税の簡易課税制度のみなし仕入率について一部改正が行われた。

改正対象となった業種は、「金融業」「保険業」「不動産業」で、みなし仕入率がそれぞれ10%引下げられた。納税額は、その分増えることになる。
無題

 

●検討対象事業者

今回の改正により、簡易課税適用について影響のある事業者は、上述したように「金融業」「保険業」「不動産業」の事業者となる。

ただし、その中で、基準期間の課税売上高が5,000万円超の場合(簡易課税選択不可)や1,000万円以下の場合(免税事業者等)には簡易課税の適用についての検討は不要である。

また、新設法人で資本金が1,000万円未満の場合も、原則、免税事業者となるので簡易課税に関して検討する必要はない。(課税事業者(一般課税)を選択するか否かの検討は必要である。)

一方、基準期間の売上が1,000万円超5,000万円以下の事業者や資本金が1,000万円以上の新設法人の場合には、一般課税と簡易課税のいずれが有利であるかについて検討が必要となる。

特に、これまで簡易課税を選択してきた上記業種の事業者に関しては、簡易課税のみなし仕入率を10%引き下げた場合の税額をシミュレートし、一般課税が有利と判断される場合には、「簡易課税制度選択不適用届出書」の提出を行う必要がある。

 

●経過措置

改正は、平成27年4月1日以後に開始する課税期間から適用となるが、経過措置として、

平成26年9月30日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した事業者は、…(中略)…当該届出書に記載した「適用開始課税期間」の初日から2年を経過する日までの間に開始する課税期間については改正前のみなし仕入率が適用」

される。
【3月末決算の場合】

3月

 

【12月末決算の場合】

12月

経過措置による旧税率の適用は、3月31日決算から9月29日決算までの法人で最大2年間、9月30日決算から3月30日決算までの法人や個人事業者で最大1年間となる。

 

●簡易課税適用の決断の時期

簡易課税制度選択届出書は、原則として課税期間の初日の前日まで、すなわち前課税期間中に提出しなければならない。また、簡易課税の適用についての検討の際には、「前課税期間の実績」や「課税期間の事業予測」が重要な判断材料の一つとなる。

したがって、通常その検討及び届出書の提出は課税期間が開始する直前(前課税期間の決算月)に行うことが多い。(3月末決算であれば3月、9月末決算であれば9月。)

しかし、今回の経過措置は平成26年9月までに届出書を提出することが要件になっているので、旧税率を延長して適用するためには、決算月に係らず、平成26年9月末までに簡易課税の適用について決断する必要がある。つまり、3月決算法人であれば通常よりも6ヶ月、8月決算法人では11か月前倒しでの決断となる。

決断を前倒しすればするほど、判断材料としての「前課税期間の実績」や「課税期間の事業予測」は精度を欠く。それでも平成26年9月までに決断し届出書を提出するのか、あるいは、経過措置の適用をあきらめ、通常通り、前課税期間の決算月まで待って結論を出すのか。

決断の時期、平成26年9月は来月に迫っている。(大袈裟!)

 

(望月)