「衰退の法則」
2017/08/04 金曜日先日、東洋経済主催のセミナー『中堅・中小企業の稼ぐ力を取り戻せ』に参加した。
オープニングスピーチを含め計5人のスピーカーによる5つの講演で構成されたセミナーで、いずれも参考になる話だったが、中でも小城武彦氏による『「衰退の法則」に学ぶ、企業成長の落とし穴~あなたの会社は大丈夫か』が興味深かった。
以下、講演の一部の抜粋である。
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●企業経営の失敗事例① ~大企業病に侵された企業群
突発的事由(災害・不祥事等)ではなく、“事業環境変化への適応不全”を理由として破綻した企業には「意思決定プロセス」、「出世条件」、「経営幹部」の3点において以下のような特徴がある。
「意思決定プロセス」
- 予定調和性が高く、対立や激しい議論を回避
- 役職、年次の過度な尊重、役職上位者への過度な同調
- 派閥等の政治的な集団の存在
- 反対意見を消すための事前調整(優良企業では議論を深めるための事前調整)
- PDCAの欠如、成功・失敗の判断が曖昧
「出世条件」
- 有力者による引上げ
- 自分の意見の自粛、幹部の意向のそんたく
- 人事評価システムの機能不全
「経営幹部」
- 強い社内政治力(役職、立場、人間関係をテコにした仕事の仕方)
- 議論の大半が経験談と持論
- ファクトに基づく経営戦略論が不得手
- 成果指向よりも人間関係志向のリーダーシップ
上記のような特徴をもつ企業でも事業環境が一定であれば問題はないが、事業環境が変化すると問題が顕在化する。
- 環境変化への感度の低下(社外よりも社内への関心、危機感の欠如)
- 戦略的・論理的な対応が取れない
- 事業構造の改革を躊躇(誰かが反対する議案を実行することができない)
優良企業では破綻企業と比べ、下記において決定的な差異が存在する。
- 事実(ファクト)をベースにした議論の尊重
- 人事部局における公正な人事評価
●企業経営の失敗事例② ~オーナー系企業
オーナー系企業の場合には、オーナー一人の意思決定に社運が依存(オーナー一本打法)している。そのため、その破綻の理由は“オーナーの意思決定の過誤”に尽きる。
優良オーナー企業でもオーナー一本足打法は同様だが、決定的な違いはオーナー自身がそのリスクを強く認識し、以下のような対策を考えていることである。
- 次世代経営者育成プログラムの実施
- カンパニー制等による権限移譲
- 辛辣な意見を述べる社外取締役による牽制
- 信頼する右腕を活用した組織能力の向上
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1時間足らずの短い講演ではあったが、中身ぎっしりの、しかもとてもわかりやすい講演だった。
環境変化の激しい今日ではやはり「日本的経営」はマッチしないこと、辛辣な社外取締役をおく度量や信頼し得る右腕を見極める目がオーナーには必要であること等々を再認識することができた。
(望月)