小規模宅地等の特例

2011/09/13 火曜日

小規模宅地等の特例に関しては平成22年の税制改正において大きな改正が行われている。細かな条件が並び直感的にはなかなか理解しづらいところであるが、相続税における主要な分野であることに間違いはないので、その改正の概要について今一度確認してみたい。

(1)相続人等が相続税の申告期限まで事業や居住を 継続しない宅地等を適用対象から除外

改正前、一定の条件を満たす宅地等については小規模宅地等の特例として50%減額を認め、さらに追加的な条件を満たすものについては「特定居住用宅地等」「特定事業用宅地等」「特定同族会社事業用宅地等」として、それぞれに80%減額を認めていた。

一方改正後では、追加的な条件(継続性等)を満たさないものについては80%減額だけでなく50%減額の適用対象からも除外されることになった。この結果、50%減額の対象となるのは、新たに継続性条件が加えられた「貸付事業用宅地等」だけとなった。

すなわち、これまで二段階<「小規宅地等」の要件→「特定」の要件>に設定されていた各特例が、改正後は基本的にそれぞれ個別に定義され、そこに該当しないものについては特例の適用ができなくなったことになる。ただし、唯一「特定同族会社事業用宅地等」については、仮に80%減額要件を満たさなくなったとしても、「貸付事業用宅地等」として50%減額適用のできる可能性が残されている。

改正前及び改正後の比較を表にまとめると以下のようになる。

(2) 共同相続があった宅地等については取得者ごとに適用要件を判定

従来、共同相続人の中に特例要件を満たす者が一人でもいれば、共同相続人全員に特例適用が認められたが、改正後は特例要件を満たさない者については特例適用が認められなくなった。

例)父の相続において、居住用の宅地を母と長男(別居・自己所有)が共同相続した場合

(3) 一棟の中に居住用とそれ以外の部分がある建物の宅地等については用途ごとに適用要件を判定

従来、一棟の建物の一部が居住用でその敷地が特定居住用宅地等に該当する場合には、居住用以外の部分についても特定居住用宅地等の特例適用が認められたが、改正後は認められなくなった。

例)父の相続において、居住用と貸付用のある建物の宅地を母が相続した場合

(4)居住用宅地等が複数ある場合の取扱い

特定居住用宅地等については、主として居住の用に供されていた一つの宅地等に限られることが明確化された。

(望月)