医療費控除
2012/02/14 火曜日確定申告の季節である。で、確定申告と言えば医療費控除である(?)。
医療費控除については国税庁をはじめ数多くのサイトで解説がなされているが、ここでは比較的間違いやすいポイントについて、いくつかピックアップしてみる。
年内に治療を受けその支払いが翌年の場合、医療費控除は医療費を支払った年に行う。医療費控除は治療日ではなく支払日を基準にする。
●保険金等による補填
・給付が翌年の場合
保険金等の給付が翌年になった場合でも、保険金等は医療費の支払いを行った年に医療費から差し引かねばならない。確定申告の時点で給付額が未定の場合には見込額を用い、後日確定した額が見込額と異なる場合には訂正を行う。
医療費から差し引く保険金等はその目的となった医療費の額を限度とする。すなわち保険金等が医療費を超える場合でも、引ききれない金額を他の医療費から差し引く必要はない。
●家族の医療費
「生計を一にする親族」の医療費は医療費控除の対象にすることができる。同居の有無や扶養関係は問われないが、親族であっても生計が一でなくてはダメで、生計が一でも親族でなければダメである。
●通院費
・自家用車
自家用車で通院する場合の駐車料や高速代は医療費控除の対象にはならない。
・タクシー
タクシー代については病状からみて急を要する場合や、電車、バス等の利用ができない場合には、その全額が医療費控除の対象となる。
・付添い人
子供の通院に母親が付き添う場合のように、患者の年齢や病状からみて、患者を一人で通院させることが危険な場合には、患者の通院費のほかに付添人の交通費も医療費控除の対象となる。
●出産費用
医療費控除は基本的に治療のための費用を対象とするが、出産に伴う費用ついては控除対象に含めることができる。(少子化対策のためには、出産一時金や医療費控除など制度を細切れにせず、いっそのこと全額国庫負担とした方がわかりやすいのではなかろうか)
●補聴器、松葉づえ、眼鏡等
所得税法基本通達73-3(2)では(控除の対象となる医療費の範囲)として、「自己の日常最低限の用をたすために供される義手、義足、松葉づえ、 補聴器、義歯等の購入のための費用」を挙げている。しかし、その前提には、「医師等の治療等を受けるため直接必要な費用」があるので、治療等を受けていな い場合にはこれらの購入費用は医療費控除の対象にはならない。眼鏡、車いす等についても同様である。
●介護費用
マッサージ、はり、整体、カイロプラティック等の施術費用は、医師、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師等、一定の資格を有する者が治療の一環として行う場合には医療費控除の対象となる。一方、これらの資格のない者による場合や健康維持を目的とする場合には控除対象とならない。
●レーシック、インプラント
国税庁のサイトでは視力回復のレーシックは医療費控除の対象にできると明記しているが、歯科治療のインプラントに関しては控除の可否について記載がない。ただし、タックスアンサーには、
歯の治療については、保険のきかないいわゆる自由診療によるものや、高価な材料を使用する場合などがあり治療代がかなり高額になることがあります。このような場合、一般的に支出される水準を著しく超えると認められる特殊なものは医療費控除の対象になりません。
という記述がある。インプラントについてはケースバイケースということだろう。
●居住者、非居住者
居住者が海外旅行中に支払った医療費や海外で治療を受けるために支払った医療費は控除対象になる。ただし、渡航費、宿泊費については控除対象にならない。一方、海外赴任等で非居住者となっている場合には、日本での申告において医療費控除を行うことはできない。
●e-TAxによる申告
e- Taxで医療費控除の確定申告を行う場合には領収書の添付に代えて、その記載内容を入力して送信することができる。この場合、入力は領収書ごと に行わねばならず、また原則5年間(平成23年改正)、領収書等を保管しなければならない。(のであれば税務署に送ってしまった方がよほど…)
●領収書の保管
医療費控除の要件を満たしたとしても、申告に際しては医療費の支払を証する領収書がないと控除はできない。えてして年初からしっかりと領収書を保管している年には結果的に医療費控除が可能な額にまで医療費が届かず、保管していない年に限って逆に医療費はかさんだりするものである。仮にそうであるならば、領収書を保管さえしておけば、その年はあまり医者の厄介にならずに済むということになる。 つまり、医療費の領収書は健康維持のためのお守り(?!)でもあるので、皆さん大切に保管しておきましょう!
最後に、国税庁サイト等にある医療費控除に関係するページを下記に抜粋してみたので参考にしていただければと思う。(いやー、こんなにあるとは思わなかった)
【パンフレット・手引き】
【タックスアンサー】
- 医療費を支払ったとき(医療費控除)
- 医療費控除の対象となる医療費
- 医療費控除の対象となる出産費用の具体例
- 医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価
- 医療費控除の対象となる入院費用の具体例
- 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価
- 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例
【質疑応答事例】
- 6 ホクロの除去費用
- 7 マッサージ代やはり代
- 8 金やポーセレンを使用した歯の治療費
- 9 歯列を矯正するための費用
- 10 人間ドックの費用
- 11 特定保健指導に基づく運動施設の利用料
- 12 動機付け支援として行われる特定保健指導の指導料
- 13 特定健康診査と特定保健指導が年をまたがって行われた場合
- 14 妊娠中絶の費用
- 15 妊婦の定期検診のための費用
- 16 不妊症の治療費・人工授精の費用
- 17 無痛分べん講座の受講費用
- 18 B型肝炎ワクチンの接種費用
- 19 オルソケラトロジー(角膜矯正療法)による近視治療に係る費用の医療費控除
- 20 かぜ薬の購入費用
- 21 漢方薬やビタミン剤の購入費用
- 22 食事療法に基づく食品の購入費用
- 23 医師やナースセンターに対する贈物の購入費用
- 24 家政婦紹介所に支払う紹介手数料
- 25 親族に支払う療養上の世話の費用
- 26 親族が付き添う場合のその親族の食事代
- 27 療養中のため家事を家政婦に依頼した場合の費用
- 28 在宅療養の世話の費用
- 29 訪問介護の居宅サービス費
- 30 介護老人保健施設の施設サービス費
- 31 差額ベッド料
- 32 入院のための寝具や洗面具等の購入費用
- 33 入院のための氷枕や氷のうの購入費用
- 34 入院患者の食事代
- 35 病院に支払うクリーニング代
- 36 病院に支払うテレビや冷蔵庫の賃借料等
- 37 お産のために実家へ帰る旅費
- 38 遠隔地の病院において医師の治療を受けるための旅費
- 39 患者の世話のための家族の交通費
- 40 病院に収容されるためのタクシー代
- 41 自家用車で通院する場合のガソリン代等
- 42 長期入院中の者の年末・年始の帰宅旅費
- 43 転地療養のための費用
- 44 湯治の費用
- 45 医師による治療のため直接必要な眼鏡の購入費用
- 46 空気清浄機の購入費用
- 47 寝たきりの者のおむつ代
- 48 注射器の購入費用
- 49 防ダニ寝具の購入費用
- 50 未払の医療費
- 51 共働き夫婦の夫が妻の医療費を負担した場合
- 52 死亡した父親の医療費
- 53 同居していない母親の医療費を子供が負担した場合
- 54 医療費の支払者と保険金等の受領者が異なる場合
- 55 医療費を補填する保険金等が未確定の場合
- 56 医療費助成金を返還した場合
- 57 出産のために欠勤した場合に給付される出産手当金
- 58 医療費を補填する保険金等の金額のあん分計算
- 59 支払った医療費を超える補填
【文書回答事例】
- 乳がんの治療に伴い乳房を失った患者に対する「CAL組織増大術」を用いた乳房再建手術に係る費用の医療費控除の適用の可否について
- 特定健康診査及び特定保健指導に係る自己負担額の医療費控除の取扱いについて
- 心臓病患者が医師の指示・処方に基づき「自動体外式除細動器(AED)」の購入又は賃借をした場合の当該対価に係る医療費控除の取扱いについて
- 「東京都特定不妊治療費助成事業」に基づき支給される助成金に係る医療費控除の取扱いについて
【所得税法】
【所得税法施行令】
【所得税法施行規則】
【所得税基本通達】
- 73-1(生計を一にする親族に係る医療費)
- 73-2(支払った医療費の意義)
- 73-3(控除の対象となる医療費の範囲)
- 73-4(健康診断及び美容整形手術のための費用)
- 73-5(医薬品の購入の対価)
- 73-6(保健師等以外の者から受ける療養上の世話)
- 73-7(助産師による分べんの介助)
- 73-8(医療費を補填する保険金等)
- 73-9(医療費を補填する保険金等に当たらないもの)
- 73-10(医療費を補填する保険金等の見込控除)
【所得税関係個別通達】
- 非血縁者間骨髄移植のあっせんに係る財団法人骨髄移植推進財団に支払われる患者負担金の医療費控除の取扱いについて(法令解釈通達)
- 臓器移植のあっせんに係る社団法人日本臓器移植ネットワークに支払われる患者負担金の医療費控除の取扱いについて(法令解釈通達)
- おむつに係る費用の医療費控除の取扱い(「おむつ使用証明書」に代えた簡易な証明手続等)について(法令解釈通達)
- おむつに係る費用の医療費控除の取扱い(「おむつ使用証明書」の様式の変更等)について)
- 介護保険制度下での指定介護老人福祉施設の施設サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて
- 介護保険制度下での居宅サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて
- 指定運動療法施設の利用料金に係わる医療費控除の取扱いについて
- ストマ用装具に係わる費用の医療費控除の取扱いについて
- B型肝炎ワクチン接種費用の医療費控除の取り扱いについて
- おむつに係る費用の医療費控除の取扱いについて
【その他法令解釈】
- 入院時生活療養費に係る生活療養標準負担額に対する医療費控除の取扱いについて(情報)(平成18年12月26日)
- おむつに係る費用の医療費控除の取扱いについて(情報)(平成18年12月26日)
- 医療費控除の対象となる在宅療養の介護費用の証明について(情報)(平成18年12月26日)
- 介護保険制度の改正に伴う医療費控除の取扱いについて(情報)(平成18年12月4日)
- 介護保険制度下での施設サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて(平成17年12月19日)
- 医療費控除の対象となる在宅療養の介護費用の証明について(情報)(平成17年2月1日)
- 医療費控除の対象となる在宅療養の介護費用の証明について(情報)(平成16年1月16日)
- 介護保険制度下での居宅サービスの対価に係る医療費控除の取扱いについて(平成15年12月26日)
- 介護保険サービスの対価に係る医療費控除に関する研修資料について(情報)(平成13年1月31日)
(望月)