決算期の変更による節税
2012/06/26 火曜日1.決算日近くに臨時収入がある場合
決算日間近の臨時収入に対しては、決算月の変更が節税を図る上で有効な手段とされている。
例えば3月決算会社において、3月に固定資産売却益や保険金収入などの臨時的な収入が見込まれる場合、決算月を2月に前倒しすることで当該収入に対する課税時期を1年近く遅らせることができる。
その間に役員給与など経費を増やす等の節税対策を行えば、課税額自体を減らすことも可能となる。
が、このようなケースでは、課税繰延の効果は1回限り、1年間だけに限られる。
また、経費の増額などの対策は、決算期の変更をせずとも、欠損金の繰戻還付制度や繰越控除制度の適用により事後的に実行しても一定の節税効果を持つ。
ただし、臨時収入と経費の増額を同一事業年度にぶつけることで利益を平準化させ、その結果、(中小企業の)軽減税率の適用額を増やすという節税効果は期待できる。
(ケース1)と(ケース2)では、2期分の所得合計は2,000で同額であるが、法人税等の合計は利益が平準化している(ケース2)の方が120(=680-560)だけ少なくなる。
2.売上(利益)の季節的変動が大きい場合
売上(利益)の季節的変動が大きい企業においては、決算日をいつにするかによって納税時期、ひいては資金繰りに一定の影響が及ぶ。
毎期、4~9月の半期利益がゼロ、10~3月の半期利益が1,000である冬型企業において、決算期が3月末である場合<A>と9月末である場合<B>とを比べてみる。税率は30%とする。
いずれの納税のタイミングも3月決算に比べて9月決算の場合は半年だけ遅れる。
これは1回分の納税額相当分だけ、常に9月決算の方が3月決算よりも手持資金が多いことを意味する。(予定納税があることを前提)
別の言い方をすれば、3月決算から9月決算に変更するだけで、1回分の納税額相当分の資金調達をコストゼロで半永久的に(季節的変動の形が変わらない限り)実現できるいうことである。
1.の臨時収入の場合が1回だけ、1年限りの課税の繰延であったのと比べると、その効果は大きいと言える。
3.留意事項
決算日は登記事項ではないので、手続きとしては株主総会の決議のほかには税務署等への異動届出書の提出だけで済む。
しかし、下記のようなデメリットもあるので、実行する際には慎重な検討が必要である。
- 1年未満の事業年度を作ることになり、期間比較などの経営分析の際には調整が必要となる
- 前倒しされた決算期に属する事業年度については課税(納税)時期を逆に早めることになる
- 当初の決算日も何らかの理由があってその日に設定したはずであるので、その理由の検証が必要となる
(望月)