退職金の税務
2012/11/15 木曜日退職金に関しては、支給者(法人)サイドの法人税、受給者サイドの所得税、そして死亡退職金である場合の相続人サイドの相続税という3つの税務的な側面がある。
支給者サイドでは給与や賞与に比べ一度に多額の損金を計上することができ、受給者サイドでは給与や賞与に比べ所得税の負担が少なく、さらに死亡退職金には所得税は課されず、相続税では非課税枠がある。
このように退職金は税務的に“えこ贔屓?”されたものであるので、納税者としてはこれを上手に使わない手はないとなるわけだが、あにはからんや、というか当然のごとく、税務上の論点は多岐にわたっていて、実務上、落とし穴も多い。
当初は、退職金の各論点別に関連ページにリンクを貼って整理したろ!などと思っていたのだが、論点と関連ページの多さを前に早々にあきらめ、今回は税目別に法令、通達、国税庁サイトの順に並べるに留めた。各論点別の整理は「近いうちに」行うつもりだ。(もしや昨日の一件で「近いうち」=「年内」ってなことになってたりして…)
なお、裁決事例については以下に記載してはいないが、国税不服審判所サイトでキーワード検索してみると、今日現在、「退職金」153件、「退職給与」150件、「退職手当」 76件、「退職所得」275件、「死亡退職」37件のヒットがある。争点になっているケースも少なくないということだろう。
=====<法人税>=====
■法人税法
- 34条2項 過大役員給与
- 34条3項 仮装経理等により支給する役員給与
- 36条 過大使用人給与
- 70条2号 過大役員退職金
- 72条の2 過大使用人給与
(なし)
■法人税法基本通達
- 9-2-28 役員に対する退職給与の損金算入の時期
- 9-2-29 退職年金の損金算入の時期
- 9-2-30 使用人兼務役員に支給した退職給与
- 9-2-31 厚生年金基金からの給付等がある場合
- 9-2-32 役員の分掌変更等の場合の退職給与
- 9-2-33 被合併法人の役員に対する退職給与の損金算入
- 9-2-34 合併法人の役員となった被合併法人の役員等に対する退職給与
- 9-2-35 退職給与の打切支給
- 9-2-36 使用人が役員となった場合の退職給与
- 9-2-37 役員が使用人兼務役員に該当しなくなった場合の退職給与
- 9-2-38 使用人から役員となった者に対する退職給与の特例
- 9-2-39 個人事業当時の在職期間に対応する退職給与の損金算入
■タックスアンサー
- 5203 使用人が役員へ昇格したとき又は役員が分掌変更したときの退職金
- 5204 役員の退職金の損金算入時期(平成18年3月31日までに開始する事業年度分)
- 5208 役員の退職金の損金算入時期(平成18年4月1日以後に開始する事業年度分)
- 5220 個人事業当時からの使用人に対する退職金
- 5230 適格退職年金契約とはどのような退職年金契約をいうのですか
- 5231 適格退職年金契約に係る課税関係
- 5242 出向先法人が支出する退職金の負担金の取扱い
■税大論叢
=====<所得税>=====
■所得税法
- 30条 退職所得
- 31条 退職手当等とみなす一時金
- 199条 源泉徴収義務
- 200条 源泉徴収を要しない退職手当等の支払者
- 201条 徴収税額
- 202条 退職所得とみなされる退職一時金に係る源泉徴収
- 203条 退職所得の受給に関する申告書
- 69条 退職所得控除額に係る勤続年数の計算
- 69条の2 特定役員退職手当等の役員等勤続年数
- 70条 退職所得控除額の計算の特例
- 71条 退職所得の割増控除が認められる障害による退職の要件
- 71条の2 特定役員退職手当等がある場合
- 72条 退職手当等とみなす一時金
- 73条 特定退職金共済団体の要件
- 74条 特定退職金共済団体の承認
- 75条 特定退職金共済団体の承認の取消し
- 76条 退職金共済制度等に基づく一時金で退職手当等とみなさないもの
- 77条 退職所得の収入の時期
- 319条の3 源泉徴収の対象となる退職所得とみなされる退職一時金の範囲等
- 319条の4 退職所得の受給に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供に係る承認等に関する手続
- 77条 退職所得の受給に関する申告書の記載事項等
■所得税基本通達
- 9-17 相続財産とされる死亡者の給与等、公的年金等及び退職手当等
- 30-1 退職手当等の範囲
- 30-2 引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの
- 30-2の2 使用人から執行役員への就任に伴い退職手当等として支給される一時金
- 30-3 受給者が掛金を拠出することにより退職に際しその使用者から支払われる一時金
- 30-4 過去の勤務に基づき使用者であった者から支給される年金に代えて支払われる一時金
- 30-5 解雇予告手当
- 30-6 退職手当等の支払金額の計算の基礎となった期間と勤続年数との関係
- 30-7 長期欠勤又は休職中の期間
- 30-8 引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とされるものに係る勤続年数
- 30-9 日々雇い入れられる期間
- 30-10 前に勤務した期間を通算して支払われる退職手当等に係る勤続年数の計算規定を適用する場合
- 30-11 前に勤務した期間の一部等を通算する場合の勤続年数の計算
- 30-12 復職等に際し退職手当等を返還した場合
- 30-13 勤続年数の計算の基礎となる期間の計算
- 30-14 その年に支払を受ける2以上の退職手当等のうちに前の退職手当等の計算期間を通算して支払われるものがある場合の控除期間
- 30-15 障害による退職に該当する場合
- 31-1 厚生年金基金等から支払われる一時金
- 31-2 退職一時金等に係る勤続年数の計算
- 31-3 退職金共済契約の範囲
- 31-4 被共済者間の公平な取扱い
- 31-5 退職給付金支給事業とその他の事業とを併せて行う団体に対して支出した掛金
- 36-10 退職所得の収入金額の収入すべき時期
■タックスアンサー
(所得税)
- 1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
- 2725 退職所得となるもの
- 2728 退職所得の収入金額の収入すべき時期
(源泉所得税)
- 2725 退職所得となるもの
- 2728 退職所得の収入金額の収入すべき時期
- 2732 退職金に対する源泉徴収
- 2735 同じ年に2か所以上から退職金をもらったとき
- 2736 解雇予告手当や未払賃金立替払制度に基づき国が弁済する未払賃金を受け取ったとき(退職所得)
- 2739 退職後に支給される給与等の源泉徴収
■国税庁質疑応答事例
(所得税関係)
- 12 企業内退職金制度の廃止による打切支給の退職手当等として支払われる給与(いわゆる退職金前払い制度へ移行する目的で廃止する場合)
- 13 企業内退職金制度の廃止による打切支給の退職手当等として支払われる給与(いわゆる退職金前払い制度へ移行する目的で廃止する場合)
- 14 企業内退職金制度の廃止による打切支給の退職手当等として支払われる給与(企業の財務状況の悪化等により廃止する場合)
- 15 企業内退職金制度の廃止による打切支給の退職手当等として支払われる給与(個人型の確定拠出年金制度への全員加入を契機として廃止する場合)
- 16 役員退職慰労金制度の廃止による打切支給の退職手当等として支払われる給与
- 17 中小企業退職金共済制度への移行による打切支給の退職手当等として支払われる給与(払込上限額を超過する部分を一時金として支払う場合)
- 18 確定拠出年金制度への移行による打切支給の退職手当等として支払われる給与
- 19 確定拠出年金制度への移行による打切支給の退職手当等として支払われる給与(使用人が資産移換又は一時金の支給を選択することができる場合)
- 20 確定拠出年金制度の規約により加入者とされない使用人を対象に打切支給の退職手当等として支払われる給与
- 21 母体企業の倒産によって厚生年金基金が解散し、その残余財産の分配一時金が支払われる場合
- 22 確定給付企業年金規約に基づいて年金受給者が老齢給付金の一部を一時金で支給を受けた場合
- 23 引き続き勤務する従業員に対して支払われる確定給付企業年金の制度終了に伴う一時金
- 24 確定給付企業年金の給付減額に伴い支給される一時金
- 25 適格退職年金制度廃止後に継続している退職年金契約
(法定調書関係)
■国税庁Q&A
■税務手続きの案内
■国税庁パンフレット
■税大論叢
=====<相続税>=====
■相続税法
- 3条1項2号 死亡退職金
- 10条1項6号 (財産の所在)退職手当金等
- 12条1項6号 死亡退職金の非課税部分
- 59条1項2号 退職手当金等受給者別支払調書
- 1条の3 退職手当金等に含まれる給付の範囲
- 1条の6 退職年金の支給を目的とする信託等の範囲
■相続税基本通達
第3条《相続又は遺贈により取得したものとみなす場合》関係
- 3-18 退職手当等の取扱い
- 3-19 退職手当等の判定
- 3-20 弔慰金等の取扱い
- 3-21 普通給与の判定
- 3-22 「業務上の死亡」等の意義
- 3-23 退職手当金等に該当しないもの
- 3-24 「給与」の意義
- 3-25 退職手当金等の支給を受けた者
- 3-26 「その他退職給付金に関する信託又は生命保険の契約」の意義
- 3-27 「これに類する契約」の意義
- 3-28 退職手当金等に該当する生命保険契約に関する権利等
- 3-29 退職年金の継続受取人が取得する権利
- 3-30 「被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの」の意義
- 3-31 被相続人の死亡後支給額が確定した退職手当金等
- 3-32 被相続人の死亡後確定した賞与
- 3-33 支給期の到来していない給与
第12条《相続税の非課税財産》関係
- 12-10 保険金についての取扱いの準用
第59条《調書の提出》関係
- 59-1 退職手当金等の支払調書の提出限度
■タックスアンサー
- 4114 相続税の対象になる死亡保険金
- 4117 遺族の方が受け取る死亡退職金
- 4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い
- 4123 遺族の方が取得する年金受給権
■国税庁質疑応答事例
(法定調書関係)
- 死亡による退職の場合
- 死亡退職した場合の「退職手当金等受給者別支払調書」の記載方法と提出省略範囲
- 退職手当金等を年金で支給する場合の「退職手当金等受給者別支払調書」の提出期限
- 適格退職年金の受給権の相続と「退職手当金等受給者別支払調書」の提出義務
- 厚生年金基金が支給する死亡一時金に係る「退職手当金等受給者別支払調書」の提出義務
- 弔慰金名目での支給がある場合の「退職手当金等受給者別支払調書」の提出義務
■税務手続きの案内
(望月)