税と社会保険における「扶養される者」の違い
2012/12/16 日曜日年末調整の季節である。年末調整と言えば扶養控除である(?)。
ここ最近、扶養控除については、改正が行われたり改正案が不成立になったりで、なんだかんだ慌ただしい。
- 扶養控除イメージ図(一番下の「H23税制改正」は不成立)
一方、「扶養」という言葉は社会保険の中にも登場する。
社会保険を広義にとらえると、下記のように分類できるが、この中で「扶養に入る」などの表現が用いられるのは、健康保険、厚生年金などに限られる。
- 年金保険(国民年金、厚生年金など)
- 医療保険(国民健康保険、健康保険、後期高齢者医療制度など)
- 介護保険
- 労働保険(雇用保険、労災保険)
扶養に入れるものなら入った方がお得という点では税制でも社会保険でも同じである。しかし、「扶養される者」の名称や範囲などについては、両者には意外と大きな違いがある。所得税、健康保険、厚生年金についてざっくりと比較してみた。
(名称)
(続柄要件)
- 所得税・・・親族
- 健康保険・・・直系尊属及び3親等以内の親族(注1、2)
- 厚生年金・・・配偶者(内縁の妻を含む)
- 注1)内縁の妻、養子、養父母を含む
- 注2)配偶者、子、孫、弟・妹、直系尊属以外については同居が要件
(所得/収入要件)
- 所得税・・・合計所得38万円以下(注1)
- 健康保険・・・年間収入130万円未満(注1、2、3、4)
- 厚生年金・・・同上(同上)
- 注1)所得税は暦年の所得の実績額、健康保険及び厚生年金は今後1年間の収入の見込額
- 注2)60歳以上や障害者の場合には年間収入180万円未満
- 注3)収入には給与・賞与収入のほか、事業・不動産収入(必要経費の控除可)、通勤費、失業給付などが含まれる
- 注4)同居の場合は被保険者の収入の2分の1未満、別居の場合は被保険者からの援助額未満という要件が付加
(年齢要件)
- 所得税・・・16歳以上
- 健康保険・・・75歳未満(後期高齢者以外)
- 厚生年金・・・20歳以上60歳未満
(その他要件)
- 所得税・・・生計を一、事業専従者以外など
- 健康保険・・・生計を一
- 厚生年金・・・同上
社会保険制度というものは税制に負けず劣らず(税務に携わる者から言えば税制以上に)複雑でわかりづらいものではあるが、どうやら内縁の妻に対しては税制よりも寛容であるようだ。
(望月)