休眠会社の取扱い
2014/09/12 金曜日●会社法上の取扱い
(会社法上の定義)
一般的に、「休眠会社」というと休業中の会社という意味で使われることが多いが、会社法では、12年間登記がない株式会社を休眠会社としている(会社法472条1項)。事業を行っているか否かは問わない。
事業を休業する場合でも登記は必要なく、逆に休業中でも役員の改選など登記事項に変化があった場合には登記を行う必要がある。
かつて、取締役の任期が最長2年だった旧商法時代には、休眠会社として扱われる「登記のない期間」は5年とされていたが、会社法で役員の任期が最長10年になったため、その期間も12年に延長された。
役員の任期について規定のない特例有限会社には、休眠会社という概念はない。
(休眠会社等の整理作業)
今年度、全国の法務局において休眠会社等の整理作業が行われる。
平成26年11月17日付けで法務大臣による官報公告が行われた後、対象会社には登記所から通知が行われ、平成27年1月19日までに「事業を廃止していない」旨の届出や登記申請がない場合には、みなし解散となり、登記官の職権で解散登記が実行される。
ただし、それから3年以内に継続の登記申請を行えば、会社を継続することができる。
みなし解散では対象法人に登記料などの負担は生じないため、少々時間はかかるが、コストと手間をかけないで解散する方法として利用することも可能と思われる。
●税務上の留意点
税法では「休眠会社」に関する規定を特に設けてはいないが、実務上は以下のような点に留意する必要がある。
(申告)
休業中は申告が免除されるという規定はないので、休業中であっても、原則として申告は必要となる。
法人税については、所得がなければ、申告をせずともその期の課税に影響はないが、それ以降の期において、以下のような問題が生じる。
- 2年連続して期限内申告がない場合、青色申告の承認が取り消される
- 休業中、無申告の事業年度があると、過年度の青色欠損金の繰越控除ができなくなる
事業再開の見込みがある場合には、法人税については申告を継続した方が無難と言える。
(納税)
休業中は、所得や課税売上がないため、基本的に、法人税や消費税について納税額が生じることはない。
法人住民税の均等割については、その地域に「事務所又は事業所を有する法人」が納税義務者となるので(地方税法24条1項)、休業により事務所等が閉鎖されていれば納税義務者にはならないと思われる。
また、法人事業税は「法人の行う事業」が課税対象となるので(地方税法72条の2)、外形標準課税が適用される法人でも、休業中の場合には課税はないと考えられる。
多くの都道府県、市町村では、納税者からの「異動届出書」により休業の報告を受け、均等割等について免税措置をとっている。
(その他届出)
休業により給与の支払いがなくなる場合には、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」の提出を行う。(社会保険の手続きの際、このコピーが添付書類として必要となる。)
また、休業の異動届出書を提出した場合には、事業を再開する際にも異動届出書の提出が必要となる。
●社会保険の手続き
社会保険加入事務所が休業する場合には、「健康保険・厚生年金保険 適用事業所全喪届」の提出を行う。
(望月)