地方法人税、地方法人特別税、地方消費税

2014/12/26 金曜日

その昔、法人に対する課税は下記のようにとてもシンプルだった。

  • 法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 消費税

その後、平成9年4月に消費税の一部が「地方消費税」となり、平成20年以後開始事業年度から事業税の一部が「地方法人特別税」に変わり、2年間の時限措置の「復興特別法人税」を挟んで、平成26年10月以後開始事業年度からは法人住民税の一部が「地方法人税」に移行することになる。

すなわち、来年の平成27年9月末決算から法人課税は下記のような体系となる。

  • 法人税
  • 地方法人税
  • 法人住民税
  • 法人事業税
  • 地方法人特別税
  • 消費税
  • 地方消費税

この中で法人住民税は、道府県民税と市町村税に分かれ、それぞれに法人税割と均等割があるので、実際には申告の都度、合計10個の「税額」の算定が今後は必要となる。

(といっても、課税標準さえ算定すれば、そこから先の税額計算は税務申告ソフトが自動計算してくれるわけだが。)

加わった各税金の概要は次のとおり。

 

○地方消費税(地方税)

法律:地方税法 [第三節 地方消費税]

平成9年4月から、地方財源の充実・強化を図ることを目的に、それまでの消費税譲与税に代わり導入された。

地方税ではあるが、当分の間は消費税と併せて国に対して申告・納付するとされており、現在もそのような形になっている。

国に納付された地方消費税は、都道府県に全額払い込まれ、事業者の本店所在地等と最終消費地との都道府県間の調整を行った上で、調整後の税額の半分は市町村へ交付される。

納税者→(納付)→国→(払込)→都道府県→(調整)→都道府県→(1/2)→市町村

今年4月の消費税率の改訂により、消費税額に対する比率は25/100から17/63に少しだけ引き上げられたが、次回の改正時には22/78にまで引き上げられることが決定している。

 

○地方法人特別税(国税)

法律:地方法人特別税等に関する暫定措置法

平成20年10月以後開始事業年度から事業税の一部を区分して創設されたもので、各地域の税源偏在の是正を目的としている。

地方税体系の抜本的改革が行われるまでの暫定措置という位置づけで、平成26年10月以後開始事業年度からは3分の1が事業税に復元される。

国税ではあるが、申告・納税は事業税などと共に都道府県に対して行う。

都道府県に納付された地方法人特別税は、国に全額払い込まれ、国から各都道府県に「地方特別譲与税」として再配分される。

譲与税額の1/2は人口を基準として、残りの1/2は従業者数を基準として、各都道府県へ交付される。

納税者→(納付)→都道府県→(払込)→国→(地方法人特別譲与税)→都道府県

 

○地方法人税(国税)

根拠法令:地方法人税法

平成26年10月以後開始事業年度から法人住民税(法人税割)の一部が「地方法人税」となる。

地方法人税が創設されました(国税庁)

地方法人特別税と同様、地域間の税源の偏在性の是正し、財政力格差の縮小を図ることを目的としているが、地方法人特別税とは異なり暫定措置ではない。

申告は法人税と併せて行うことになるが、納付書は法人税とは別になる(横浜中税務署に確認済み)。

納付された地方法人税は、国から地方への地方交付税の原資とされる。

納税者→(納付)→国→(地方交付税)→地方

 

上記3つの税金は、地方分権と地域間格差縮小の一環として、国から地方への税源移譲あるいは地域間の税源偏在性の是正を目的としている。

法人税制以外でも、所得税から住民税への税源移譲(平成19年)やふるさと納税の創設(平成20年)など、そのような方向性を持った税制改正がすでに行われている。

平成24年には、

地方法人特別税の抜本的見直しに向けて検討を行うとともに、地域間の税源偏在の是正に向け、地方法人課税のあり方等について幅広い検討を進める

ことを目的に「地方法人課税のあり方等に関する検討会」が設置され、毎月有識者等に対するヒアリングが実施されている。平成26年10月の検討会では、今、注目を集めている冨山和彦氏によるGL経済圏をベースにした発表も行われている。

その平成25年11月の報告書では、

  • 偏在性が小さく税収が安定した地方税体系の構築
  • 地方団体間の財源の不均衡の調整は地方交付税で対応
  • 地方法人特別税・譲与税制度は、将来的に消費税1%相当額と税源交換
  • 法人住民税法人税割の地方交付税原資化(地方法人税の創設)
  • 法人事業税における外形標準課税の拡充

などが基本的な認識として確認され、その一部(地方法人税の創設など)は平成26年度の税制改正において実行されている。

間もなく公表される平成27年度税制改正大綱では、どのような具体的な改正が盛り込まれるのだろうか。

 

(望月)