贈与税の控除・納税猶予・非課税制度一覧表
2015/01/19 月曜日今年1月から、相続税の基礎控除が従来の5分の3に縮小され、同時に最高税率の引き上げも行われた。小規模宅地の特例についての適用範囲の拡大等はあるものの、全体としてみると相続税は増税傾向にある。
一方、贈与税はここ数年、新たな納税猶予制度や非課税制度が創設されるなど、相続税とは逆に減税の方向にあるといえる。平成27年度税制改正大綱でも、「結婚子育て資金一括贈与制度」の創設が予定されている。
そうした近年の贈与税における減税措置の目的の一つは、高齢者から現役世代への資金移動を容易にすることで経済全体の活性化を図ることにあるが、納税者にとっては、それらをうまく利用すれば、増税傾向にある相続税の節税対策にもなるだろう。
ただ、最近の法人税における「○○促進税制」と同様、制度の数が増えれば増えるほど、実務上、その適用にあたってはより注意が必要となる。贈与税の各減税措置においても、適用要件などがそれぞれ微妙に異なっており、落とし穴はいっぱいだ。
ということで、主な贈与税の控除・納税猶予・非課税制度について一覧表を作成してみた。間違い等あればご指摘いただければ幸いである。
(以下、居住用不動産の配偶者控除は「配偶者控除」、非上場株式等の贈与税の納税猶予は「事業承継税制」、住宅取得資金等の贈与の非課税措置は「住宅取得資金贈与」、教育資金一括贈与の非課税措置は「教育資金贈与」、結婚、子育て資金一括贈与の非課税措置は「結婚資金贈与」と呼ぶ。)
各項目ごとの留意点を挙げると以下のようになる。
○法令条文、適用期限
- 相続税法上の規定と措置法上の規定に分かれる。
- 「基礎控除」は、相続税法で60万円の控除枠が定められ、措置法でそれを110万円まで拡大している。適用期限はない。
- 「事業承継税制」は、措置法上の規定であるが適用期限はない。
○贈与者(親族・年齢要件)
- 「相続時精算課税」は、平成27年より適用要件を60歳以上(従来は65歳)の親又は祖父母(従来は親のみ)に拡大。
- 贈与者の年齢要件があるのは「相続時精算課税」のみ。
- 「住宅取得資金贈与」「教育資金贈与」が直系尊属であるのに対し、「相続時精算課税」「結婚資金贈与」は親と祖父母のみ。
○受贈者(親族・年齢要件)
- 受贈者の適用要件は、似たものはあるが同じものは一つとしてない。
- 「事業承継税制」は、平成27年より後継者の親族要件を廃止。
○対象資産
- 「配偶者控除」は、居住用不動産だけでなく、居住用不動産を取得するための金銭でも適用可。
- 「住宅取得資金贈与」は、住宅そのものの贈与では適用不可。
○適用限度額、適用回数
- 「配偶者控除」は、同じ配偶者からは一生に一度だけ適用可。
- 「住宅取得資金贈与」の非課税限度額は、贈与年度、住宅の質、消費税率によって変わる。最高限度額は、平成28年10月~平成29年9月締結の良質な住宅家屋で消費税率が10%である場合の3,000万円。
- 「住宅取得資金贈与」は、適用回数に制限はない。
○受贈者が亡くなった場合
- 「相続時精算課税」では、受贈者の権利義務が受贈者の相続人に承継される。
- 「教育資金贈与」「結婚資金贈与」では、受贈者が亡くなった場合、資金管理契約は終了する。
- 「事業承継税制」「教育資金贈与」「結婚資金贈与」では、贈与税は免除される。
○受贈者が一定の年齢に達した時
- 「教育資金贈与」「結婚資金贈与」では、受贈者が一定の年齢に達した時に資金管理契約が終了し、その時点の非課税拠出額の残額に対して贈与税が課税される。
○贈与者が亡くなった場合
- 「教育資金贈与」「結婚資金贈与」では、贈与者が亡くなったとしても資金管理契約は継続する。
- 「教育資金贈与」では、その時点で非課税拠出額に残額があったとしても相続税の課税はない。
- 「結婚資金贈与」では、その時点の非課税拠出額の残額に対し、相続税が課税される。(ということは、相続税対策には使えないということか?)
- 「結婚資金贈与」において、相続税の課税対象となる非課税拠出額の残額は、結婚・子育て資金支出額とみなされるため、その後、受贈者が50歳に達した時に残額があったとしても贈与税の課税対象にはならない。
○他の制度との併用適用
- 「基礎控除」と「相続時精算課税制度」の併用適用は不可。
○申告要件
- 「相続時精算課税」「事業承継税制」「住宅取得資金贈与」は、期限内申告が要件。
- 「教育資金贈与」「結婚資金贈与」は、信託がなされた日等までに非課税申告書を資金管理契約を締結した取扱金融機関の営業所等を経由し、納税地の所轄税務署長に提出。
(望月)