消費税の改正(平成23年度税制改正)
2011/07/29 金曜日平成23年度の税制改正は、当初、高額給与所得者への課税強化や相続税の基礎控除の引き下げのほか、法人税率の引き下げや消費税の課税強化などが盛り込まれ、税制の「抜本的な改革」として(税源などお構いなしに)華々しく施行されるはずであった。
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しかし、ねじれ国会のためにその法案が今年3月に不成立となり、さらに震災等の影響もあって税制改正はしばらく棚上げ状態となっていた。ようやくこの6月にその「法的手当て」として当初の法案を二つに割り、その片方だけをかろうじて可決成立させるに至った。
残りの片方については継続審議ということで、その行方(成立か廃案か)は現時点でははっきりしていない。先に挙げた当初の主要な改正案は(下記の二つの除き)すべてこちらの先送り対象に仕分けされている。
今回成立した法案の中では、次の二つがインパクトのある改正といわれている。
- 消費税の課税売上割合95%以上ルールの改正
- 消費税の免税事業者要件の厳格化
1.消費税の課税売上割合95%以上ルールの改正
改正前、課税売上割合が95%以上の課税事業者であれば、消費税の納税額は課税売上に係る消費税(A)から課税仕入に係る消費税の全額(B)を控除して算定することができた。
しかし、今回の改正により、課税売上高が5億円を超える場合には、課税仕入のうち非課税売上に対応する分(B2)などの一部の消費税は控除することができなくなった。
これによって納税額は当然増えるわけだが、さらに経理処理においても、課税仕入を「課税売上に係るもの」と「非課税売上に係るもの」とさらに「共通」の3つに区分しなければならず、また、個別対応方式が有利か、一括比例方式が有利かの判断も必要となるので事務的な負担もかなり増えることになる。つまり納税者にとっては、二重の意味で負担増となる。
ちなみに、課税売上割合が95%未満の課税事業者にとっては、上記の処理は従来より当たり前に行ってきたものであり、今回の改正による影響は全くない。(逆に言うと、従来から益税の恩恵に与れていなかった) また、課税売上高が5億円以下の課税事業者には依然として95%以上ルールの適用は継続されるので負担増はない。(これからも益税の恩恵に与れる)
消費税では売上規模が一定額以下の事業者に対し免税制度や簡易課税制度が設けられ、それらが益税に当るという批判があった。しかし、95%以上ルールによる減税額は免税制度などによる減税額よりも実は大きいということは税務の世界では常識でもあった。今回はその隠れた最大の益税に手が入れられたと言ってもいいのかも知れない。
2.消費税の免税事業者要件の厳格化
消費税において課税事業者になるか否かは、当該事業年度の2期前(=基準期間)の課税売上高の金額で決まる。基準期間の課税売上が1,000万円以下であれば、当該事業年度は(当該事業年度の課税売上がいくらであろうと)免税事業者となる。新設会社では、初年度及び2期目には基準期間がないので、自動的に2期目までは免税事業者となった。
今回の改正では基準期間の課税売上高の他にもう一つ基準を設けた。当該事業年度の直前期の上半期(6か月)において、課税売上高が1,000万円を超える場合には免税措置が適用されないというものだ。つまり、基準期間をもう一つ設けたと考えることができる。従来の基準期間1の課税売上が1,000万円に達していなくとも、新しい基準期間2の課税売上が1,000万円を超えれば、当該事業年は課税事業者となる。新設会社では、早ければ2期目から課税事業者になるので、新設会社を利用した消費税の節税の効果は大きく低下することになった。
上記二つの改正はいずれも税率のアップが度々話題に上る消費税に関するものであり、仮に税率が5%から10%に上がれば今回の改正による納税額への影響は当然のことながら2倍になる。
それぞれの適用時期は以下のとおりである。
- 95%以上ルールの改正・・・個人事業者は平成25年分より、法人は平成24年4月以後開始事業年度より適用
- 免税事業者要件の厳格化・・・個人、法人ともに平成25年1月1日以後開始事業年度より適用
新設会社を作るなら、今年中か?!
(望月)