所得税節税策のいろいろ

2016/04/28 木曜日

確定申告が終わって早一月半。その間、会計事務所は確定申告期間中に溜まった記帳資料やら3月申告やら4月申告やら何やらに追われ、待望のGWが明けると今度は法人税申告のメイン5月申告が待ち受けている。

こうして会計事務所にとっての一大イベントたる確定申告は総括されることもなく、来年まであばよ!となりがちなわけであるが、今年はGW前に(季節外れであることは承知の上で)、所得税の定番(&割と単純な)節税策のいくつかを比較検討することで総括にしたいと思う。

ラインナップは、小規模企業共済、倒産防止共済、中退共、NISA、個人型DC、国民年金基金、ふるさと納税の7つ。それぞれの適用要件、限度額、期間の目安、税務上の取扱いを一覧にしてみた。

→ 所得税節税策一覧表

 

各制度の概要は以下の通り。

 

小規模企業共済制度

  • 事業主自身の退職金制度で、加入要件は小規模企業者である個人事業主又は会社の役員
  • 掛金の年間限度額は84万円で、全額が所得控除の対象となる
  • 事業廃業、事業承継、法人成り、解約などの事由に応じて、共済金、準共済金、解約手当金が支給される
  • 支給された共済金等は、受取時の年齢や受取方法(一括/分割)により、退職所得、公的年金所得、一時所得に分かれる
  • 掛金の払込月数が240か月(20年)未満での解約の時、解約手当金は掛金総額を下回る
  • 解約時に65歳以上かつ180か月(15年)以上の払込月数であれば、準共済金の請求が可能
  • 課税時期の繰り延べと他の所得から退職所得等への転換による節税効果を持つ

 

中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)

  • 取引先が「倒産」した場合、掛金総額の10倍まで貸付が受けられる制度
  • 加入要件は、中小企業者である個人事業主又は会社
  • 掛金の年間限度額は240万円(前納分を含めると最大480万円)で、掛金総額は800万円まで
  • 掛金の全額が必要経費となる一方、解約時の解約手当金は事業所得として課税される
  • 掛金の納付月数が40カ月未満での解約の時、解約手当金は掛金総額を下回る
  • 貸付金の貸付限度額は最高8,000万円で、返済期間は貸付額に応じて5年から7年まで
  • 貸付利息は「無利子」と謳っているが、貸付額の1/10相当額が掛金総額から控除されるため、返済期間5年の場合には実質4%(=10%÷5年×2)の利率となる
  • 低金利の今日、融資制度としては高金利だが、掛金の経費化による節税と簿外資産の形成に効果を持つ

 

中小企業退職金共済制度(中退共)

  • 中小企業に勤める従業員のための退職金制度
  • 加入要件は、中小企業者である個人事業主又は法人
  • 従業員ごとに一人当たり月額5千円~3万円の範囲で掛金を選択することができ、掛金の全額が必要経費となる
  • 掛金の払込期間が23か月以下である従業員への退職金は掛金総額を下回るが、43か月超である場合には掛金総額に運用利息と付加退職金が退職金に加算される
  • 従業員の退職前にその退職金の一部を必要経費にできる反面、退職金は中退共から直接従業員に支給されるため過大支給になった場合に取り戻しできない可能性がある
  • 特別退職金共済制度(特退共)との比較はコチラ

 

少額投資非課税制度(NISA)

  • 上場株式等の譲渡所得及び配当金の非課税制度
  • 譲渡所得が非課税になる一方、譲渡損失は損益通算及び3年繰越控除の対象にならない(ので、一概に節税手段とは呼び難い…)
  • 20歳以上の居住者が適用対象者だが、「ジュニアNISA」の創設により実質的に年齢制限はなくなった
  • 平成28年以降の運用限度額は、年間120万円×5年=600万円(ジュニアNISAは80万円×5年=400万円)
  • 時限立法であり、制度の適用期限は平成35年末まで(ジュニアNISAは平成36年末まで)

 

個人型確定拠出年金制度(個人型DC)

  • 確定拠出年金制度のうち、加入が任意で加入者本人が掛金を拠出する制度
  • 平成27年税制改正により、国民年金の第1号から第3号まで被保険者全員が加入できるようになった
  • 運用限度額は被保険者ごとに細かく設定されている→個人型DC拠出限度額一覧表
  • 給付は「老齢給付金」「障害給付金」「死亡一時金」の3種類で、掛金の途中引出しや解約返戻金はない
  • 老齢給付金は原則60歳で受給できるが、加入期間が10年未満の場合、受給開始年齢は延びる
  • 拠出額が所得控除、運用利益が非課税、給付額が退職所得等の扱いになるなど、投資商品として考えると節税効果は大きい

 

国民年金基金

  • 国民年金の第1号被保険者のための公的年金制度(2階建て部分)
  • 加入要件は国民年金第1号被保険者及び60歳以上65歳未満の国民年金の任意加入者
  • 掛金の上限は年額81万6千円(個人型DCにも加入している場合には、その掛金と合計で81万6千円が限度)
  • 4月から翌年3月までの1年分の掛金を前納することで掛金の割引あり
  • 給付は、「老齢年金」7種類と「遺族一時金」で、任意脱退、中途解約はできない
  • 老齢年金は公的年金所得、遺族一時金は非課税となる
  • 個人型DCとは年金資産の運用権限・責任の有無の点において、小規模企業共済とは貸付制度や解約返戻金の有無の点において違いがある

 

ふるさと納税

  • 名称は「納税」だが自治体を相手方とする「寄付金」であり、所得税では寄付金控除、住民税では寄附金税額控除の適用対象となる
  • 節税というよりも、日本各地の特産品を負担額「2千円+α」で入手できるという点でお得感があり、今や大人気の制度
  • 自己負担額2千円を除いた全額が税額控除となる目安金額はコチラ
  • 特産品の受取による経済的利益は一時所得となり、したがって50万円以下であれば課税されない
  • 平成28年度より「企業版ふるさと納税」の施行も決定(ただし、特産品の返礼は禁止される模様)
  • 今回の熊本地震に関しては、被災地の自治体の事務負担や特産品に関するするコストの発生を回避するため、他の自治体がふるさと納税の受付を代理するという取り組みが行われている

 

(望月)