望月会計事務所

事務所ニュース

News 2004.10月号

望月会計事務所
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 今、「韓流(はんりゅう)」と呼ばれる韓国ブームが日本を席巻しています。そして、そのきっかけとなったのが、あの韓国ドラマ『冬のソナタ』でありました。かく云う私も、すっかりハマったクチの一人なのですが、おかげで今年のあの猛烈な「夏のアツさ」も『冬のソナタ』の鑑賞によっていくらか和らげることができました!?

 歴史上の軋轢により、「近くて遠い国」の関係が続いた日本と韓国。これまでにも、政治面や経済面での融和への動きや交流はあったものの、我々国民レベルの意識の中では、なかなかその距離感が縮まることはありませんでした。目には見えない溝がそこには確かにあったように思います。

 しかし、たった1本の恋愛ドラマが、その溝を軽々と飛び越え、韓国から日本へ「共感」の輪をあっという間に広げてしまいました。もちろん、これまでの日韓共催のW杯や様々な文化交流などの下地があってのことで、また、これによって両国間の問題がすべて解消されたわけではないでしょう。しかし、少なくともこのドラマによって両国の国民の意識に大きな変化がもたらされたことは間違いない事実だと思います。

 ”たかがドラマ、されどドラマ”といったところでしょうか。

 ”たかが…”といえば、日本プロ野球のスト問題は、現在、新規球団の参入を容認する方向で進みつつあるようです。「NPB(日本野球機構)」対「選手会」という観点からみれば、今のところ”たかが選手”会側の圧勝といっても差し支えないでしょう。

 しかし、日本プロ野球界における史上初のストライキの決行は、選手会にとっては大きな賭けであったはずです。それによってファンを敵に回してしまったら、選手会として依るべき後ろ盾を失う結果になったかも知れないのですから。

 テレビで生中継された両陣営揃っての記者会見の模様は、この問題に取り組む両者の”情熱”、”真剣さ”、”責任感”、”危機感”の度合いのギャップを、そのまま国民に伝えることになりました。その結果、古田会長をはじめとする選手会側に圧倒的な「共感」が集まり、その声がNPB側の重い腰を動かすことになりました。

 外部からの強制や意図的な操作とは異なり、心の内から自然に湧き上がる「共感」というものの力。それは、時に”山をも動かす”ほどのパワーを秘めているということを実感させる2つの出来事だったように思います。

1.来年度(平成17年度)商法改正について

 『番頭』『手代』などの言葉がいまだに使用され、片仮名文語体の(非常に読みづらい!)文章がそのまま残る現行商法。そんな商法を「現代化」させるべく、来年度、大規模な商法改正が予定されています。この「現代化」の中には、上記のような形式上の問題だけでなく、内容に関しても現代の社会情勢に対応させるという意味が込められています。現時点では、あくまで「試案」の段階ですが、その中には中小会社に関係する項目も数多くあります。そこで、改正が予想される主な項目について、本号にてあらかじめご報告いたします。


○会社の商号

  • 類似商号規制(19条)及び不正競争目的の商号使用規制(20条)の廃止

(背景)

 企業活動の広域化の結果、地域ごとに商号規制をおく意味が乏しくなった


○株式会社と有限会社の一体化

  • 「株式会社」に一本化

(今後の取扱い)

 今後、有限会社の新設はできなくなるが、現在の有限会社は選択により有限会社のまま存続できる

  • 「株式会社」を第1種から第3種までに区分

(区分案)

第1種:株式の譲渡制限あり+運営は株主総会中心 →現行の有限会社
第2種:株式の譲渡制限あり+運営は取締役会中心 →現行の中小会社
第3種:株式の譲渡制限なし           →現行の公開会社


○合名会社、合資会社関係

  • 1つの会社類型として規律する
  • 一人合名会社や法人無限責任社員を認める
  • 株式会社への組織変更を認める


○設立関係

  • 最低資本金制度の見直し
  • 残高証明等による払込証明を認める
  • 募集設立を廃止し、発起設立に一本化


○株式関係

  • 市場取引・公開買い付け以外の方法による自己株式の買受けを認める
  • 端株制度の廃止
  • 株券の発行は定款に定めある場合のみ可能とする
       →原則、株券の発行は行われなくなる


○機関関係

a.株主総会関係

  • 特別決議の決議要件の定款による引き下げを可能とする

b.取締役関係

  • 会社の種類に応じた任期の見直し
  • 書面による取締役会決議を認める
  • 共同代表取締役制度の廃止

c.その他

  • 会計参与制度の創設


○その他

  • 決算公告の取扱い
  • 金銭以外の財産による残余財産の分配が可能であることの明示
  • 新しい会社類型(日本版LLC)の創設

2.利益とキャッシュフロー、さらに所得について

 利益を何より重視してきた民間企業において、近年、”キャッシュフロー経営”なるものへの注目が高まっています。一方、収支計算のみが決算のすべてであった国や地方公共団体等においては、最近、”企業会計思考”なるものの必要性が謳われています。

 ここで、”キャッシュフロー経営”とは、資金の流入・流出に着目して行う経営スタイルを指し、”企業会計思考”とは、貸借対照表や損益計算書などを用いて財政状態や経営成績を把握しようとする考え方を言います。

 この興味深い逆転現象は、民間企業における”利益さえ計上すれば良い”と言う発想や、国等における”収支さえ合わせておけば問題なし”と言う考え方の限界を示しているといえます。

 利益、キャッシュフロー(以下、CF)、さらに所得は、それぞれ次のような算式で表すことができます。

 利益 = 収益 - 費用 (← 損益計算書)
 CF = 収入 - 支出 (← 収支計算書、又はCF計算書)
 所得 = 益金 - 損金 (← 税務申告書)

 「収益」と「収入」と「益金」の間の差異、そして「費用」と「支出」と「損金」の間の差異。これらが、すなわち「利益」と「CF」と「所得」の差異であることを上式は示しています。この差異がある時、利益や所得を増やすことが必ずしもCFを増やすことにはならず、またCFの増加が必ずしも利益や所得の増加を伴うとは限らなくなります。

 例えば、掛売上は収益(利益)の増加をもたらしますが、売掛金の回収が行われるまでは収入(CF)とはなりません。また、在庫や設備などの購入は、支出となりますが、その時点では費用にはなりません。利益のみを追いかけた経営を行う場合、このような取引が多くなる傾向があり、これが行き過ぎたものになると、不良債権、滞留在庫、過剰投資などの問題が生じ、いずれ資金的な問題に直面することになります。

 また、借入れという取引は、収益(利益)ではありませんが、現金売上と同じく収入(CF)となります。したがって、収支を合わせることのみが命題である場合には、どうしても安易に借入れに頼りがちとなり、その結果、遠からず過大債務の状態を招いて将来のCFや利益を圧迫することになります。現在多額の国債残高を抱えるこの国の財政状況は、まさにその典型例と言って良いでしょう。

 民間企業にしろ国にしろ、”ゴーイング・コンサーン(継続して事業を行うことを前提とする事業体)”であることにおいて違いはありません。したがって、一瞬でも資金ショートを起こすことは許されず、と同時に、将来に渡って事業活動を継続していくことができるような適正な利益を確保することが要求されます。利益とCFの両立を図ること、すなわち”企業会計思考”と”CF経営”の両方の観点が、事業や組織の継続性を保つ上では本来的に不可欠であるのです。

 すべてにおいて右肩上がりという時代は終わりました。人口や企業数の増加により、何もしなくとも自然に税収が増えていった時代も終わり、また資金が足りなくなったとしても金融機関からいつでも資金調達ができる時代も終わりました。より厳しくなったこのような環境の変化に、国や民間企業はまさにこれから対応していかざるを得ないのです。

 さらに、民間企業においては、利益やCFはともかくも「税金(所得)をとにかく少なくしたい」という性向があります。しかし、あまりにこの思いに取り付かれてしまうと、事業の継続性において支障をきたす可能性があることを指摘しておきたいと思います。

 税額計算の基となる所得とは、利益に税務調整(加算・減算)を加えて算定されます。税金は支出となりますので、なるべく少ないことに越したことはありません。しかし、税金を少なくするためには、所得を小さくしなければならず、所得を小さくするためには、基本的に利益を小さくする必要があります。このように税金の最小化は、利益の最大化とは基本的に相反する位置にあります。したがって、経営において税金の軽減を最優先してしまうと、それは必ず利益を減らし、CFにマイナスの影響を与え、ひいては企業の財政基盤を弱体化させてしまう危険性があるのです。

 税金は利益を後追いするものであるという事実を前提とすれば、事業者としての我々が採るべき道は、あくまでも利益の最大化とCFの最大化を最優先した上で、合法的な節税の手段を漏れなく適用し、無駄な税金を絶対に払わないようにすることの他はないと言えるのです。