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JR福知山線で起きた電車脱線事故は、事故そのものの悲惨さに加え、JR西日本という鉄道会社の企業体質を露呈させ、鉄道利用者である我々に大きな衝撃を与えました。ここ最近、鉄道のほか自動車、航空業界などの有力企業において相次ぐ安全性に係るミスやトラブル。それらの原因については各方面で様々な分析が行われていますが、メディアでは利益重視の経営に一因があるとする論調が主流となっています。
利益重視の経営が安全性の軽視に繋がるという論理には確かに一定の説得力があります。しかし、現実には今回の事故によって、JR西日本は将来にわたり多大かつ深刻な損失を負うことになりました。だとすれば、JR西日本の経営は、そもそも利益を重視した経営ですらなかったという方が正確だと考えます。
“今期の決算書の見栄えを良くしたい”という「目先の数字」を追い求める経営。それは会社の長期的かつ本質的な利益を追求する経営とは全く異なるもので、あまりに表面的かつ近視眼的な経営というべきものでしょう。今回の事故において、運転士が目先の運行表(数字)に囚われて無謀な運転をした(させられた)姿は、「目先の数字」を追うあまり安全性や利益を度外視して無謀な経営を行う経営者の姿勢を、そのまま投影しているように感じます。
利益を「目先の数字」としてではなく本質的に捉えるならば、メディアの論調の根底にある“利益と安全性は両立し得ない”という前提自体にも疑問を抱かざるを得ません。安全性というものも一つの商品価値であるという事実に照らせば、安全性(商品価値)を高めることが、利用者の信頼性を高め、それによって長期的に安定した利益を得るという発想の方がむしろ常識的な考え方ではないでしょうか。その観点からすると安全性と利益とは対立する関係ではなく同調関係にあるといえるはずです。企業である限り、安全性を無視した経営があり得ないのと同様に、利益を重視しない経営というものもあり得ず、そこに二者択一の選択を持ち込むことは企業の存在意義を否定することにも繋がるように思います。
今回のような事故の再発を防ぐためには、当事者はもちろんのこと、それを報道するメディアなどにおける発想の転換も必要ではないでしょうか。
1.「株式」について
ニッポン放送の株式をめぐる争奪戦や西武グループの株式をめぐる一連の事件により、今にわかに「株式」に対する注目が高まっています。このところの商法改正によって、株券の発行が原則廃止となったり、また種類株式の発行が認められたりするなどして、今後さらにその関心は大きくなっていくものと思われます。そこで、「株式」とは何か、また実務上どのような問題に関連するのかについて、その概略をまとめてみました。
(権利)
株式には以下の2つの基本的な権利が与えられています。
(株主総会における定足数・決議要件)
株主総会では、議案により定足数・決議要件が異なります(→別紙1)。ある株主が、定足数・決議要件を満たす株式数(議決権数)を単独で所有している時、その議案についてはその株主が単独で決定権を有していることになります。フジテレビ対ホリエモンの戦いは、この決定権(経営権)をめぐるものでした。
(評価)
株式の移動(相続、贈与、譲渡など)があった場合、課税上、その評価が問題となります。公開株式であれば、市場価格等がその評価額となりますが、非公開株式の場合、制度上決められた評価計算によって算定を行う必要があります。会社の規模や持分割合などによって評価計算の方法が異なるなど、なかなか複雑でわかりづらい分野ですので株式の移動がある場合には細心の注意が必要です。
(名義株)
かつて、会社を設立する場合には7人の株主が必要とされていました。その際、出資はせずに名義だけを実際の株主に貸すということが実務上行われていました。このような名義と実際の株主とが異なる株式を名義株といいます。
西武グループでは、先代からその名義株を利用して会社経営を行ってきましたが、今回そのカラクリが明らかになったことで、証取法上の問題(虚実記載や上場基準への抵触など)や税務上の問題(相続税や留保金課税など)が生じることになりました。
何らかの事情で名義株を利用せざるを得ない場合には、実際の株主が誰であるのかを証明するための証拠書類の保存等が大切になります。
(種類株式)
平成17年度商法改正により、内容を異にする様々な種類の株式の発行が認められるようになりました。これによって、議決権や配当請求権に様々なバリエーションが生まれ、それを経営戦略に活用する道が開けました。ただし、種類株式をどのように評価するかなど実務的な課題は残されています。
(自己株式)
従来、会社が自社の株式を保有することは原則禁止とされていましたが、平成13年の商法改正により一転して原則自由となりました。このため、公開会社などでは市場で出回る自社の株式数を調整したり、非公開会社でもオーナーの相続対策や反対株主等の整理に利用することができるようになりました。
(持株会)
持株会は、従業員の経営参加意識の向上や安定株主の形成などを図る上で、経営上有効な手段となります。また、従業員にとっても低金利の続く今日、配当のつく自社株式は魅力的な投資対象といえるでしょう。ただし、実際の運用にあたっては、どの程度の持分を持株会与えるか、あるいはどのような持株会規約をつくるかなどについて十分な検討が必要です。
2.平成17年度税制改正
財務省大綱によると、平成17年度は、所得税を中心とする平成18年度の大幅改正の準備段階としての位置付けにあり、内容的に大きな改正はありません。しかし、昨年までの老年者控除や配偶者特別控除の廃止に続いて、定率減税の縮減が織り込まれており、所得税に関しては依然増税傾向が続いています。別紙に主な改正内容をまとめましたのでご参照下さい。(→別紙2)
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