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寒中お見舞い申し上げます。
当初の予報に反して、本当に寒い冬となりました。風邪をひきやすい時節、一層のご自愛のほど、お祈り申し上げます。
一昨年のプロ野球新規参入問題以降、ここ2年足らずの間に、それこそジェットコースター・ドラマのごとく繰り広げられた、ホリエモン主演による“ライブドア劇場”に幕が下ろされようとしています。それと共に、その知名度とは裏腹に経営実態の不透明な企業が、いかにして社会にこれほどのインパクトを与えるまでの存在に成り得たのか、その経営のカラクリが徐々に明らかにされてきました。
■時価総額経営
平成11年の商法改正により「株式交換」という手法が制度化され、企業買収(M&A)を行う際、その対価の支払手段として自社株式を発行することが認められるようになりました。つまり、自社株式を資金代わりに使用することができるようになったのです。これを機に、日本でも時価総額(=株価×株数)の最大化を経営目標とする「時価総額経営」というものに注目が集まるようになりました。
時に、東証マザーズなどの新興企業用の証券市場が開設され、将来性さえ見込まれれば赤字会社であっても株式上場ができる環境が整いつつありました。これらの市場ではその市場の特性上、株価は実績よりも将来への期待感を反映する傾向が強く、あのYahoo株式のように赤字にもかかわらず驚くような高い株価がつくこともありました。投資家の期待感を煽り高い株価さえつけば、実績は後回しでも「時価総額経営」は成立する。ライブドアはまさにそこに目を付けたと言えます。
前代未聞の株式100分割やメディアへの過剰な露出など、ありとあらゆる手段を講じて株価の吊り上げを図るライブドア。その思惑通り高騰した株価を利用し、数々のM&Aを実行して経営規模の拡大を実現していきますが、一方で核たる事業もない中、あまりに乖離し過ぎた株価と実態とのギャップという根本的な課題に直面します。そこで考案されたのが、今回直接の摘発対象となった投資事業組合を利用した“無から有を生む”魔法のスキームでした。
■自社株式の商品化
ライブドアが支配する投資事業組合に、M&Aと株式交換を絡ませてライブドア株式を取得させ、株式分割やM&Aの情報をタイミングを見計らって市場に流して株価を吊り上げ、その後に外部へ売却することで得た売却益をライブドアの利益として計上する。投資事業組合の情報の非開示性を利用(悪用)したこのスキームは、単純に言ってしまえば、「自社株式の商品化」と言えます。自社株式が商品となるのであれば苦労は要りません。株式交換などによって自社株式を発行する機会を作りさえすれば、いくらでも商品、すなわち利益を生み出すことができるのですから。まさにホリエモンは、ドラエモンの四次元ポケットのごとく、自社株式を無尽蔵の利益の源泉としていたのです。
しかし残念ながら、そして当たり前のことに、このスキームは資本取引と損益取引の混同という粉飾経理のほか、偽計取引やインサイダー問題など(実際には子会社や複数の投資事業組合を用いて実態を見えづらくしていましたが)違法・脱法行為の合わせ技でしかありませんでした。が、これこそが、ライブドアという創業10年に満たない企業をここまで大きくしたカラクリでもあったのです。
■その後に残したもの
ネットベンチャーの勝ち組として“稼ぐが勝ち”という身も蓋もない理念を掲げ、プロ野球新規参入問題やニッポン放送買収騒動等によって、おそらく自身でも「想定外」に既成権力へ立ち向かう若き改革者というイメージをも獲得し、果ては政界をも巻き込みながら時代に踊ったホリエモン。長く続いた不況下において、時代の寵児としてのその存在は、起業を志す若者達に夢や希望を与えたことも確かに事実ではあるでしょう。それだけに、この事件はライブドアグループの直接の利害関係者だけでなく、広く社会に影響を与えることになったと言えます。
かつて日本にもあった政治の季節。しかし、一部の極端な思想を持つ若者達によって引き起こされた、あの「浅間山荘事件」などの突出した事件を機に、それはやがてしぼんでいきました。そしてその後に訪れたものは、若者の政治に対する「無関心」と「シラケ」という時代でした。
経営者としては、結局のところYahooそっくりのポータルサイトと買収先企業の株式しか後に残すことができなかったホリエモンは、その事件によって、次の時代にいったい何を残すことになったのでしょうか。
平成18年度税制改正について
昨年12月に与党税制調査会より、平成18年度の税制改正大綱が公表されました。その前文では、現在のわが国の経済状況を、「“バブル後”という長いトンネルを抜け出ようとしているところ」としながら、一方これからの新たな課題として、「少子化による人口減少社会」「先進国の中で最悪の財政」「国民生活の安全・安心の確保」「中小企業の経営の活性化」などを挙げています。税制面については、これまでの景気回復を最優先した政策から、新しい時代にふさわしい税制の構築への転換の必要性を謳い、注目の消費税については「平成19年度を目途に…消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく取り組んでいく」として改正への含みを持たせています。
平成18年度の税制改正大綱の主な内容は以下のとおりです。
○定率減税は、所得税、住民税とも廃止
○自発的な耐震改修を促進するため、「耐震改修税額控除制度」を創設
○損害保険料控除を改組し、「地震保険料控除」を創設
○同族会社の留保金課税制度の適用範囲の縮小
・同族会社の判定基準の改正及び留保控除額の拡大
○交際費課税の範囲の明確化
・5,000円基準の明示
○土地売買による所有権移転の登録免許税の軽減税率の延長(→別紙参照)
○土地及び住宅家屋に係る不動産取得税の軽減税率の延長(→別紙参照)
○酒税制度における酒類の分類及び税率の簡素化
○所得税、相続税、法人税の公示制度(高額納税者番付)の廃止
○一定の同族会社役員に対する役員報酬の給与所得控除額の損金不算入
○欠損法人を利用した租税回避行為の防止
なお例年と同じく3月末の法案成立後、税制改正に関する小冊子をお配りする予定です。
コンプライアンスについて
近年、経営の分野において「コーポレート・ガバナンス(企業統治)」と並んで「コンプライアンス」という言葉をよく耳にするようになりました。“法令遵守”という意味のこの言葉は、社会人たる我々からすれば「何を今さら」といった感を抱かせるものではありますが、しかしここ数年立て続けに起こる企業不祥事を考えると、その重要性を否定することはできません。
我々の経営を取り巻く環境には、多数の法律、規則、命令・指導等が存在します。すべての企業に適用される商法や税法などの他にも各業界固有の法令があり、さらにそれらは社会情勢の変化に合わせて随時、新設・改正・廃止が繰り返されていきます。
ヒューザー社やライブドア社をみてもわかるように、この問題の最も恐いところは、問題が発覚したその日を境に事態が一変してしまうリスクがあるということです。メディア等では社会的な影響が大きい大企業の事件を中心に扱っていますが、その会社や社長自身に決定的なダメージを与えることがあるという意味では、大企業だけの問題ではありません。
「これくらいなら」という某ビジネスホテルの社長のような軽い感覚や、「今までは大丈夫だったから」「他もやっているから」といったような弁明が通用しない世界でもあります。企業の社会的責任が問われ、また馴れ合い社会からルール社会へと移行しつつあるといわれる今日、これまで以上に意識すべき問題であることに間違いはないでしょう。
書籍紹介
■「なぜ御用聞きビジネスが伸びているのか」
藤沢久美著 ダイヤモンド社 1,500円(抜)
藤沢久美サイト: www.kumifujisawa.cocolog-nifty.com
NHK教育テレビで3年間に渡り放送された「21世紀ビジネス塾」という番組で取り上げられた日本全国の元気な中小企業。その経営現場では他業種であっても参考となるような「小さな会社の小さな工夫」が実践されていました。“販売支援”の時代から“購買支援”の時代へと移り変わりつつ中、いかにして顧客の良き「御用聞き」となれるか。本書ではそのヒントとなる実例が、丁寧にわかりやすく紹介されています。
■中小企業庁発行の各種パンフレット、広報冊子
無料
中小企業庁サイト: www.chusho.meti.go.jp
“中小企業を育成し及び発展させること”を任務とする中小企業庁では、中小企業への施策に係る広報冊子や中小企業の経営に係る様々なパンフレットを発行しています。中でも「中小企業施策利用ガイドブック」は、経営の各局面ごとに利用できる施策が一覧にまとめられ、実務上、利用価値の高いものになっています。入手は、中小企業庁のサイトからPDFファイルでダウンロードするか、または最寄りの商工会議所などから取り寄せることができます。何と言っても無料ですので、使わにゃ損、損です。
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