望月会計事務所

事務所ニュース

News 2007.6月号

望月会計事務所
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 竹内まりやの『人生の扉』という曲を、最近よく耳にします。五十路を超えて人生を思う、という内容の曲ですが、気が付けばいつの間にやら私も四十路の坂を超え、人生二度目の後厄を今年迎えています。おそらく今、人生の半ば過ぎあたりにいるのでしょうが、そのせいでしょうか、「人生」という言葉に妙なリアリティを感じてしまう今日この頃です。

 今春の統一地方選挙で、高校時代の友人が市議選に立候補し、見事当選を果たしました。前回の選挙で落選した後の、彼やご家族の苦労を知らない訳ではないだけに、感慨はひとしおです。会社を立ち上げた友人。これから立ち上げようとしている友人。単身アメリカに渡った友人。中国と日本を往き来する友人。離婚を経験した友人。家族の介護に追われる友人等々。私のごく周りを見回しただけでも、様々な、それぞれの「人生」が展開されていることを実感します。

 『人生の扉』の中に、「満開の桜…を、この先いったい何度見ることになるだろう」という歌詞があります。会計事務所では、確定申告が終わり少し気持ちに余裕ができた頃に、毎年桜の季節が訪れます。そんな春をあと何度迎えるのか、そう思うことも確かにあります。が、同時に、一度たりとて同じ春はやっては来ない、ということもまた感じるようになりました。

 “NG”や“撮り直し”などはない、一度きりの人生というドラマ。
 それは、“悲劇”、“喜劇”などと、単純には割切れない奥の深い物語。
 そこで出会う人々は、不思議な「縁」によって結ばれた人生の“共演者”。

 この時代、この場所に生まれた意味を時に漠然と考えながら、様々な共演者達と時に出会ったり別れたりしながら、劇的とは言えないかもしれない毎日を、この先も生きていくのだろうと思います。人生における一つの節目でもある厄年。それは人にこんなことを考えさせる時期でもあるのでしょうか。

1.  役員給与税制

 平成18年度の税制改正により、大きく変わった役員給与税制。その具体的な取扱いが、改正後、約1年を経過した今年の3月に、ようやく通達として公表されました。役員給与による利益調整の阻止(A.役員給与の損金算入制度)や、個人事業者との税負担のバランス化(B.特殊支配同族会社の役員給与の一部損金不算入制度)を目的とした改正ではありますが、未だに曖昧な点は残されており、多くの批判がある制度でもあります。しかし、中小企業にとっては、納税額に大きな影響が及ぶ可能性も高く、役員給与の改定などの際には、今まで以上に慎重に対処する必要があります。以下、その概要と注意点を挙げていきます。

A.役員給与の損金算入制度

 役員給与については、下記の3つのいずれかに該当しなければ、損金算入することができない。

ア.定期同額給与
イ.事前確定届出給与
ウ.利益連動給与

ア.定期同額給与

(意義)

 事業年度を通じ、各月の支給額が同額の給与、その他これに準ずるものをいう。 

(支給額の改定)

  • 事業年度開始日から3ヶ月以内に改定が決定し、その直後から実行されたものは、定期同額給与として扱う。
  • 経営状況が著しく悪化したこと等を理由とする減額改定については、定期同額給与として扱う。
  • 役員の「職制上の地位の変更」や「職務内容上の重大な変更」等により改定が行われた場合には、定期同額給与として扱う。

(損金不算入の額)

 法令を文理解釈すると、定期同額給与とみなされない場合、年間支給額の全額が損金不算入になるケースも想定される。となると、税額への影響は極めて大きい。実際の調査において、どのような取扱いがされるかは、現時点では不明である。

(対策)

  • 役員給与の改定を行う場合には、早期に事業予測を行うなどして、事業年度開始日から3ヶ月以内に実行する。
  • 使用人兼務役員制度を利用する。
  • 役員を解任し、使用人として給与を支給する。

イ.事前確定届出給与

(意義)

 支給時期、支給額を、事前に税務署に届け出てから支給する給与をいう。

(届出期限)

 役員給与の決議を行う株主総会等の日から1ヶ月を経過する日と、事業年度開始日から4ヶ月を経過する日の、いずれか早い日とする。(平成19年度税制改正後)

(届出どおりに支給できなかった場合)

 原則、事前確定届出給与として届け出た役員給与全額が、損金不算入となる。 

(届出の内容の変更)

 不可能。

(期中に就任した役員への給与)

 事業年度開始日から4ヶ月を超えた後に役員に就任した者に対しては、届出期限の関係で、事前確定届出給与とする余地はない。が、就任後の給与が定期同額給与に該当する場合には、当然に定期同額給与として損金算入することはできる。

(対策)

  • 従来、定時株主総会の利益処分として支給していた役員賞与については、事前確定届出給与とすることにより、損金算入できる余地が生まれた。
  • 各月支給ではない非常勤取締役や監査役などへの役員給与については、事前確定届出給与とすることにより、損金算入することができる。

ウ.利益連動給与

 上場会社等のみに適用のため、省略。

B.特殊支配同族会社の役員給与の一部損金不算入制度

(概要)

 一定の同族会社(特殊支配同族会社)については、社長(業務主宰役員)への給与のうち、その給与所得控除額相当分が会社の損金から除外される。例えば、社長の役員給与が年間600万円の場合、その給与所得控除額相当分174万円が損金不算入となり、会社は522,000円(実効税率30%)の増税となる。役員給与が1,200万円の場合には、690,000円(実効税率30%)の増税となる。

(特殊支配同族会社の意義)

 株式(議決権)の90%以上を同族関係者等が保有し、かつ常務に従事する取締役のうち、過半数が同族関係者等の会社をいう。

(所得基準)

 基準所得金額(会社所得金額と社長給与の合計額の前3年間の平均額)が1,600万円以下(平成19年3月31日以前開始事業年度は800万円以下)の場合、適用が除外される。

(対策)

  • 株式(議決権)の10%超を、同族関係者以外に保有してもらう。
  • 常務に従事する取締役の過半数を、同族関係者等以外にする。
  • 基準所得金額を意識した決算を組む(役員給与、減価償却費等の計上額の検討)

(注意点)

 株主や役員数の調整は、会社経営における同族関係者以外の影響力を大きくし、経営の安定化という面において支障となる可能性がある。

2.  平成19年度税制改正

 平成19年度の税制改正について、主要な改正項目をお知らせいたします。(→別紙

 今年は、平成18年度改正における役員給与税制のようなインパクトのある改正はなかったものの、企業税制においては、減価償却費制度、留保金課税制度、役員給与税制について減税措置が採られ、その他、事業承継税制、住宅税制、納税手続等についても、納税者有利の方向での改正が行われました。

 なお平成19年度税制改正の詳細については、近日、例年と同じく小冊子をお配りする予定ですので、そちらもご参照いただければと思います。