国際税務について
2012/12/26 水曜日グローバル化の波は当然のことながら税務の世界にも及ぶ。
最近の税務関連のニュースでも、国際税務に係る話題が多くなってきた。「タックスヘイブン」や「移転価格」などの国際税務に特有の言葉も、今ではあちこちで目にし耳にするようになった。
税制は、もともと会計に比べてローカルなものであり、国際税務と言っても国際会計基準のように制度の国際的な統一化を目指すものではない。
人や企業やモノやサービスが国を超えて動く時、各国で中身の異なる税制をどのように機能させるか。国際税務のテーマはそこにある。
具体的な目的、役割としては、以下の3つが挙げられる。
- 国際的な二重課税の排除
- 国家間の課税権の適正な配分
- 国際的経済活動の活性化
独特な概念や言葉がいくつも出てきて、とっつきにくい感のある国際税務であるが、「グローバルな経済活動に対し、ローカルな税制が懸命に対処する分野」と捉えると、何となく健気にも思え、親しみも……湧く。(と考えて気後れしないことが大事だ)
また、その内容を整理すれば、法人税を中心として、所得税、消費税、相続税の税目ごとに分類することもできる。各税目の国際税務に関係する部分のポイントと最近話題になった事例をざっくりとまとめてみた。
【法人税】
◆ 納税義務者による課税範囲の区分(法法4②)
- 内国法人・・・全世界所得
- 外国法人・・・国内源泉所得のみ
◆ 外国法人に対する課税(法法9)
国内源泉所得の種類、恒久的施設(PE)の有無、種類によって課税方法、税率が決まる。
◆ 内国法人の外国税額控除(法法69条①)
内国法人の国外源泉所得に対して、外国法人税等が課せられている場合に適用できる。
◆ 海外関係会社等に係わる税制
- 移転価格税制 (措法66の4~4の2)
- 外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)(措法66の6〜9の5)
- 外国子会社配当益金不算入制度 (法法23の2)
- 過小資本税制(措法66の5)
- 過大支払利子税制(措法66の5の2)
(参考)国際課税に係る主な改正の経緯
◆ 最近話題となった事例
世界の超優良グローバル企業の露骨な租税回避に対する風当たりがこのところ強くなっている。ついにスターバックスは税金を余計に支払う!と言い出した!?
【所得税】
◆ 納税義務者による課税範囲の区分(所法7①)
- 居住者・・・全世界所得
- 非居住者・・・国内源泉所得のみ
◆ 非居住者に対する課税(所法164①)
外国法人に対する課税とほぼ同じ。
◆ 居住者の外国税額控除(所法95)
居住者の国外源泉所得に対して、外国所得税が課せられている場合に適用できる。
◆ 最近話題となった事例
いずれも納税者の居住地がどこかが問題となった事案。
【消費税】
◆ 課税対象(消法4①)
「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等及び外国貨物の輸入」が課税対象。居住者/非居住者、内国法人/外国法人、PEの有無などは消費税では問題とならない。
◆ 国内取引の判定(消法4③)
- 資産の譲渡又は貸付け・・・資産の所在場所
- 役務の提供・・・役務の提供が行われた場所
- 例外・・・消費税法施行令6条1項及び2項で定める場所
◆ 最近話題となった事例
海外事業者からのネット配信サービスは現行法では国外取引となるので消費税は課されない。消費税が課される国内事業者との間における税の中立性、公平性が問題となっている。
【相続税・贈与税】
◆ 納税義務者と課税範囲(相法2の1、2の2)
- 無制限納税義務者・・・国内財産、国外財産、相続時清算課税適用財産
- 制限納税義務者・・・国内財産、相続時清算課税適用財産
- 特定納税義務者・・・相続時清算課税適用財産
◆ 納税義務者の区分(相法1の3、1の4)
相続人の住所/国籍/居住期間、被相続人の住所/居住期間の組み合わせにより、いずれの納税義務者に区分されるかが決まる。
(追記)
平成25年度税制改正により、非居住者の納税者区分が下記のように一部変更となった。
◆ 外国税額控除の適用(相法20の2)
無制限納税義務者が取得した国外財産に対して、外国の相続税等が課税された場合に適用できる。
◆ 最近話題となった事例
財産を国外に移し、受贈者を海外に居住させてからの贈与というあからさまな租税回避行為に対する最高裁の判決は…。
【租税条約】
国際税務に関する規定には国内法と租税条約がある。国内法と租税条約の規定に違いがある場合には原則として租税条約が優先される。
平成24年10月現在、我が国は64カ国との間で53条約を締結している。近年の特徴としては、情報交換規定の拡充、所得源泉地国における課税の減免などがある。
【その他】
一定額以上の国外送金あるいは国外財産の保有について税務署に報告する制度。
◆ 国際連帯税
「国境を越える特定の経済活動に課税して、貧困や環境、感染症などのグローバルな課題に取り組むための資金を調達する国際的な税」。税制調査会や外務省などでも検討が始まっている。
<参考>
(望月)